音楽

57th Annual Grammy Awards:パフォーマンス総集編。

2015年2月8日、今年も年に1度の音楽の祭典「グラミー賞」がロサンゼルスのStaples Centerで開催されました。

グラミー賞は音楽に関するあらゆるジャンルを対象とした部門が作られていますが、オンエアされるのは「視聴率のとれる人気部門」。しかし3時間以内で収まる範囲とはいえ、ポップス、カントリー、ロック、ヒップホップ、ソウル/R&Bなど、幅広いジャンルのアーティストによる渾身のパフォーマンスを一度に見る事ができるため、お目当て以外の才能、日本では全く宣伝されないようなアーティストを目の当たりにすることもできます。特にカントリー、フォーク、ブルース系のパフォーマンスは、楽しみにしている日本人音楽ファンも多いのではないでしょうか。

以下はグラミーウォッチャー歴ウン十年の筆者による、第57回グラミー賞のパフォーマンスに関する雑感となります。ホストは4年連続でLL Cool Jでした。

※今年のグラミーを見るに当たって※

グラミーやオスカーでは、社会情勢を反映させた演出が盛り込まれる事が多々ありますが、今年は「Black Lives Matter」「DV/性犯罪の防止」が大きく取り上げられました。

①「Black Lives Matter」

昨今のアメリカと言えば、白人自警団・警官が無抵抗の黒人青少年を殺傷する事件が相次ぎ、連綿と続く人種差別、黒人差別が大きく表面化した年でもあります(2012年のTrayvon Martin射殺事件、Michael Brownが射殺され暴動に発展したFerguson騒乱、白人警官に首を絞められて死亡したEric Garner事件等多数)。昨年末には、公民権運動等を描いた映画「Selma」が発表され、グラミー、オスカー両者にノミネートされていますが、歴史的に見ても、黒人の権利を訴える運動、構造的な問題を是正しようという運動が激化しているここに来ての、グラミー。音楽業界と人種問題には深く長い歴史がありますから、大方の予想通り、かなりきちんと取り上げています。この空気感は演出側のみならず、アーティスト個々人や観客を含めた式全体に反映されているので、事前知識として分かっておくと良さそうです(全く予備知識が無いと恐らく意図を汲み取れません)。

②「DV/性犯罪の防止」

昨今のアメリカでは、レイプ/DV被害が表面化しています。アメリカ保健福祉省が昨年発表した全米調査報告書(National Intimate Partner and Sexual Violence Survey)によると、アメリカ人女性の19.3%、アメリカ人男性の1.7%がレイプ被害に合っているとの結果が出たのだとか。最近ではTwitterでも数々のレイプ/DV関連のハッシュタグが作られ、著名人含む女性陣からのレイプ/DV被害の報告、そして、それに伴う男性陣のサポートの表明がなされています。水面下でこれまた連綿と続いて来た男性社会の重い弊害を、21世紀なって漸く社会が受け止め出したということでしょう。式典中に非常に大きな動きがありました。

【パフォーマンス一覧】

日本のマスメディアではグラミーというと「誰が受賞したか」ばかりを取り沙汰しますが、グラミーの醍醐味はパフォーマンスにあります。受賞云々は二の次ということで、ここではパフォーマンスに特化してお届けします。

①AC/DC:"Rock or Bust""Highway to Hell"

今年のオープニングは認知症によるマルコムの脱退、フィルの殺人疑惑等、2014年はバンドにとってもファンにとっても苦悩が多かったAC/DC(グラミーでのパフォーマンスは初、アメリカのTV出演は14年振り)。今年唯一の“Narasらしくない”起用と言えますが、そこが正に“Narasらしい”所でもあります。「みんなグラミー賞は保守的とか言うけど、冒頭で大御所ロックバンド出しちゃうよ!地獄へ導いちゃうよ!」という計算が垣間見られるというか何と言うか。冒頭は新曲"Rock or Bust"、そして褪せない名曲"Highway to Hell"。ブライアンが吠え、アンガスが走ります。ドラムは復活したChris Slade。ギターにはヤング兄弟の甥っ子Stevie Youngが加入しています。ノリノリのガガ様、大騒ぎするDaveGrohlなど、粧し込んだ老若男女のセレブリティがスタンディングでAC/DCを受け止める様は壮観ですね。また、グラミーでは、嘗てオープニングでWillSmithがWildWildWestを歌った時もアリーナ全員がサングラスをかけるという演出がありましたが、今回は後半のHighwayで、皆さんがdevil horns(赤い角)をお召しになっておりました。Katyの紫頭に似合っていました。単独ライブでは会場が文字通り揺れ動く事を思うと「やっぱりグラミーだな」という感は否めませんが、ステージ上はいつだって本気汁ぶっしゃー。最高です。
★★★★★単独ライブのが良いに決まっているで賞。
★★★★★ツアー参戦済、燃え尽きて参りました。
★★★★☆とにかく元気な姿が見られて良かったです、泣いちゃう。

2014年リリース、16枚目のスタジオアルバム。泣けばいい。叫べばいい。

②Ariana Grande: "Just a Little Bit of Your Heart"

今やティーンのアイドル、ボーイズのファンタジー、ガールズの憧れとなった可愛い子ちゃんが、Anna Kendrickの紹介で登場。AC/DCで場が燃え盛った後、ピアノとストリングスを従えて、しっとりと歌い上げていました。こちら、全く悪く無いパフォーマンスではありましたが、「ACDCの後で、クールダウンできて良かった」との評もあれば、「お祭りなのに、トーンダウンした」など、賛否両論。確かに今回は、中盤から、主張がかなり強いパフォーマンスが繰り広げられるので、明日覚えているかと言われると、そんな事はないかもしれない……恐らく、グラミーだし、大人なバラードで力も孤誇示したいし、シングルも売りたいし……という所だったのかと思いますが、如何せん他の衝撃が強すぎました。因みに会場には、いつも通りニワトリ頭のお兄ちゃんの姿も。昨年度はインスタグラムに「ホモ兄貴pgr」的な事を書かれ、「あたしのお兄ちゃんて最高なのよ!!あんたよりモテるし!許さないから!」と盛大に言い返した事が話題にもなりました。いいぞもっと言え。
★★★★★BPM高め推奨で賞。
★★☆☆☆大人な側面も可愛いで賞。

2014年リリース、売れまくった2枚目のスタジオアルバム。

③Tom Jones/Jessie J: "You've Lost That Lovin' Feelin'"

The Voice UKのコーチでクルーナーのSir Tom Jonesと、UKポップシーンで大活躍中のJessie Jの2人が、The Righteous Brothers(Barry Mann & Cynthia Weil夫婦作曲)のトリビュートで、1964年のヒット曲をパフォーマンス。グラミーにおけるトリビュートには誰も何も期待していないとは言え、サブステージで見つめ合い歌い上げる2人はあまりにもカラオケチック。80年代育ちは口を揃えて「TopGun…」と言っていましたが、個人的には「スナックでシナトラを歌っちゃうおじさん&お相伴をする若手女性社員」を彷彿とさせました。浸れノスタルジア。こういう時間もグラミーの醍醐味です。…この後Pop SoloPerformance発表でしたが、受賞を逃したテイラーが立ち上がるのが早いこと早いこと。
※The Voice UK 2013 - Coach Performance
https://www.youtube.com/watch?v=FO8W-3owt8M
★★★★★何を着てらっしゃるので賞。
★★☆☆☆メキメキ恋して ふられた気持ち。

「20世紀にアメリカのテレビやラジオで最もオンエアされた100曲」の1位。

④Miranda Lambert "Little Red Wagon"

Dierks Bentleyの紹介で登場、カントリー界のおきゃん娘ミランダによるAudra Mae(Judy Garlandのgreat-great-niece )のカバー(ミランダ新譜「Platinum」収録)。旦那様が微笑ましく見守る中、勇ましいパフォーマンスで会場を沸かせました。出順も良い中で、きちんとカントリー、きちんと進化系、きちんとセクシー、きちんと万人受けするステージ。特に最近は安定した歌唱、パフォーマンスを見せていて、最早「アイドル」枠を脱出してドリー(・パートン)枠に入りそうな勢いです。ボンデージ風の黒いレザーのお衣装もとっても似合っているし、痩せすぎ問題が騒がれる昨今、ヘルシーで超可愛い。痩せていれば綺麗だなんて時代は、もう過ぎ去って頂きたいものです。 
★★★★★ぽちゃかわ最高で賞。
★★★☆☆全世代全方向的に楽しめるニューカントリー。

5枚目となるスタジオアルバム。

④Kanye West "Only One"

夢見るお騒がせ小僧がここに登場。サー・ポールとの共作で、急死した母&キム・カーダシアンとの間に生まれた娘さんに送ったメッセージソングをソロパフォーマンスしました。会場を暗転させ、赤いフーディ姿でサブステージに立ったカニエ。床に埋め込まれた揺らめくスポットライトの上で、切々と歌い上げたのですが(下から照らされていて若干怖い)……こういったパフォーマンスをさせると流石ですね。好き嫌いはさておき、才能溢れるお方です。6年振りのグラミーでのステージ、まずは大成功と言って良いのではないでしょうか。派手なパフォーマンスは後半で。
★★★★★(物凄く色々と言いたい事はございますが)才能単体には抗えない魅力があるで賞。
★★★☆☆彼らしい真摯なパフォーマンス。

蟹江の6枚目(雑)。

⑤Madonna "Living for Love"

今夜のハイライトの1つ。昨年はMacklemore & Ryan Lewisの "Same Love" でLGBTサポート、グラミー内合同結婚式を執り行い、物凄く大きな話題となりましたが、今回は新譜“Rebel Heart”から“Living For Love”を初披露。こちらを楽しみにしていた方も多いことでしょう。

プレゼンターのMiley CyrusとNickiが“Our bitch!”と紹介すると、まずは大画面に闘牛士に扮した美しいマドンナが映し出され、客席からは煌めくマスクをかぶったミノタウロスが勇ましく行進。“This will be a revolution of inquiring further, of not needing to win other's approval, of not wishing you were someone else but perfectly content to be who you are. Someone unique and rare and fearless. I want to start a revolution of love.”とのナレーションが流れて幕が上がり、女王様の降臨という流れ。衣装はGivenchy、赤いホットパンツの闘牛士コスでした。 この如何にもマドンナらしい派手な演出に、会場も狂喜乱舞。PV通り、闘牛士とボレロを舞うステージで、各方面からの評価も、視聴率も、大変に良かったのですが……BritのGiorgio Armaniの衣装がお美しいので、是非そちらも見て下さい(Britでは階段から転がり落ちるというまさかのアクシデントはありましたが。あちらでは日本人ダンサーも出演しています)。ともあれ、Queen of Popらしいステージ。
★★★★★Gは平等で賞。
★★★★★彼女がいなかったら、時代は動いていない。
★★★★☆マドンナもお尻も、嘘つかない。

13枚目のスタジオアルバムのツアー。参戦しました。女王でした。

⑥Ed Sheeran"Thinking Out Loud"ft John Mayer,Herbie Hancock,Questlove

これはもう、非常に素晴らしいパフォーマンスでした。すっきりと「楽しい!」とはとても言い難い今回のグラミーですが、こちらはグラミーの良さが存分に発揮されたステージが見られました。James Cordenの紹介で、Ed Sheeranの登場です。ギターにジョン、ピアノにハンコック、ドラムにクエストラブという超豪華メンバーが、若手の可愛らしいラブソングをがっちり支え、極上の1品に仕上げました。それぞれの持ち味をきちんと醸し出し、それぞれがさりげなく目立ち、でも主役の座は奪わないオトナ達。職人。そして特筆すべきはウェリントン眼鏡(The Late Late Showでもかけていましたね)、ネイビーのスーツと蝶ネクタイ、ピンクのギターを抱えたジョンでしょう。ギタリストとしては最高峰、しかし作詞家/男としては賛否両論な彼ですが……今宵は全編に渡って格好過ぎる…これは落ちる…この格好でギター弾いてるだけなら最高なのに!
★★★★★ジョンがBuddy Hollyで賞。
★★★★★全員が最高過ぎる、萌え場。

2枚目のスタジオアルバム。

⑤Electric Light Orchestra :"Evil Woman""Mr. Blue Sky"

Ed Sheeranの紹介で登場。2014年の再結成コンサート@Hyde Parkが秒(実際は15分)で売り切れた、ELOによる楽しいステージ。Jeffrey Lynneの前でサー・ポールが立ち上がって踊る姿に、ちょっと胸が熱くなりました(カメラが寄り過ぎて座ってしまっていましたが)。Mr. Blue Sky ではEdも参加し、新旧ブリティッシュ・インベージョンの共演に、会場が和やかな雰囲気。色々な意味で、もう少し盛り上げても良かったのではないかとは思いますが、登場自体が嬉しいですね。ELOは2015年、UKツアーが決定しています。
★★★★★堂々の安定感で賞。
★★★☆☆演出のおざなり感。

⑥Adam Levine,Gwen Stefani: "My Heart Is Open"

ジョンメイヤーと衣装が丸かぶりのRyan Seacrestによる紹介。…なるほど、CBS(グラミー放送局)はNBC(TheVoice放送局)を潰しに来たのですね(違います)。先ほどはThe VoiceのUK版からトムとジェシーがパフォーマンスしましたが、アダムとグウェンはアメリカ版からのお越しになります。曲はMaroon5の2014年のアルバムから。しかし控えめに言って、特別感の全く無いステージでした。個人的な意見ではありますが(しかもグウェンはソロアルバムのリリースを控えているのにナンですが)、このお2人、バンドを従えると相当に魅力的なのにな。ということで、The Voice 2014 - Gwen Stefani, Adam Levine, Pharrell Wiliams and Blake Shelton: "Hella Good"を(映像がなかった)。
★★★★★真っ赤な口紅は世界で一番似合うで賞。
★★☆☆☆筆者のハートは半閉まり。

マルーン5、5枚目のスタジオアルバム。

⑦Hozier,Annie Lennox:"Take Me to Church""I Put a Spell on You"

これも非常に素晴らしいパフォーマンス。2014年の耳タコソングですので、最早それ程楽しみにもしていなかったのですが……予想を大幅に超えて良かった。まず昨年度、目覚ましい活躍をしたHozier(アイルランド出身)ですが、去年話題となったVictoria’s secretやTheVoiceでのパフォーマンスよりも、堂々と伸び伸びとしていました(前者では、曲のテーマに全く沿っていない場でのパフォーマンスで話題に)。今回は、露出過多のエンジェル達に囲まれていなかったというのもあるでしょうが、この1年で重ねた経験を、きちんとモノにしてきたことが大きいように思えます。立ち姿もサマになってきました。背が高いので、堂々としているとステージ映えします。そしてなんと言ってもアニー(スコットランド出身)!!アニーが強烈に格好良すぎて、貫禄ありすぎて、カリスマ過ぎて!!一気に血流が上がった方も多いことでしょう。一流の女優が映画を、シーンを、画面を独り占めするように、ステージを丸ごと持っていきました。当然のスタンディングオベーション。天晴でした。小娘小僧の皆様におけましてはよくお勉強して頂きたいものです。
★★★★★文句無いで賞。
★★★★★アニーが引っぱりHozierが食らいつく理想的なステージ。

デビューシングル「Take Me to Church」含む1枚目のスタジオアルバム。

⑧Pharrell Williams,Lang Lang,Hans Zimmer: "Happy"

The Weekndの紹介。Neptunes、N.E.R.Dでも活躍してきましたが、ようやくソロでもバカ売れし、一般的な認知も高まったファレル。2年連続でパフォーマンスです。これちらは、冒頭から、完全にBlack Lives Matterを意識してのパフォーマンスでした。まず会場が暗転、不穏なBGMが流れる中、ベルボーイ風の短パン衣装+黄色のスニーカーという出で立ちでメインステージに登場すると、スポットライトの下で熱い語りを始めます。“It might sound crazy what I’m about to say, sunshine she’s here, you can take a break…I’m a hot air balloon that could go to space, with the air that I don’t care, because I’m happy,”(1文毎に数国語でのナレーションも流れる)。その間に黒いフーディのダンサーがファレルの周辺に集まり(Trayvon Martinを射殺されたきっかけは「フードをかぶっていたから」)、語り終了と共に薄暗い照明の中、クワイヤーの叫びが響く中でHappyがスタート。客席から黄色い衣装のストリングス隊が舞台へ上がり、白い衣装のクワイアーが客席通路で踊ります。更に最初のサビ入り、皆が「Happy〜」と歌いたくなる所で、サブステージに座すLangLangによる、激しくも悲しいピアノソロの挿入。その間、メインステージにいるファレル御一行は“両手を挙げて静止”するポーズをとりました(Ferguson事件「Hands Up Don’t Shoot」)。

……冒頭でも述べた人種差別事件の余波が渦巻く中ですから、パフォーマンスに組み込んでくるアーティストが現れるのは想定の範囲内ではありますが、物凄い主張の強いステージです。会場では、楽しんでも良いのか、ノっても良いのかという戸惑いの空気が漂っていましたが、意義深い、印象的なステージでした。これを見て、何を思うか。必見。
★★★★★大人の短パン2人目で賞。
★★★★☆Revolution 。

ファレル2枚目のスタジオアルバム。

●オバマ大統領の登場●

毎年グラミーでは多かれ少なかれ社会的な主張が押し出されるのはよくあることですが(去年はGLBTサポート)、今年はなんと、大統領がビデオで登場(昨年度ラテングラミーにも登場しています)。DVと性犯罪防止を訴えました。全文はこちらをどうぞ。

http://necomaneki.com/feminism/%e7%ac%ac57%e5%9b%9e%e3%82%b0%e3%83%a9%e3%83%9f%e3%83%bc%e8%b3%9e%ef%bc%9a%e3%82%aa%e3%83%90%e3%83%9e%e5%a4%a7%e7%b5%b1%e9%a0%98%e3%81%ab%e3%82%88%e3%82%8bdv%e6%80%a7%e6%9a%b4%e5%8a%9b%e6%92%b2/

これは、性犯罪やDVを食い止めるためのホワイトハウスのキャンペーン"It's On Us" の一貫。この後にDVサバイバーの女性がスピーチし、Katyへのパフォーマンスに続きます。因みにスピーチが終わるや否や、Twitter上ではリリ&クリスブラウンの件が取り沙汰されていました(リアーナがクリスに顔面を殴打された写真が出回った)。「DV野郎のクリスが、何故会場にいるのか」と。本当それ。(注:彼らの場合、双方に殴り合っていた事が後の告白で分かっています)
http://itsonus.org

⑨Katy perry:"By the Grace of God"

本年度のスーパーボールが話題になったばかりのKaty。あちらではド派手なパフォーマンス、大規模なセット、JeremyScottの愛らしい衣装、早着替え、レニクラやミッシーとのコラボ、“左側の鮫”と、スーパーボウルならではの楽しさ満載のステージだったのですが(最高視聴率、元夫の不用な応援ツイート等も話題になりました)、打って変わって、こちらグラミーでは、シンプルな白のドレスを纏い、大画面に踊る影を移す形で"By the Grace of God"を歌い上げました。……これは元夫であるラッセルブランドとの破綻についての歌だと言われていますが、オバマ大統領とサバイバーの方のスピーチの後ということで、ラッセルの株どん下がりです。
★★★★★Russell Brandはきっと悪いヤツなので賞。
★★☆☆☆何をしてもサマになるポップアイコン(iHeartRadioが良かった)。

ケイティ、4枚目のスタジオアルバム。

⑩Tony Bennett、Lady Gaga: "Cheek to Cheek"

Katharine McPheeの紹介。トニーと言えば昨今の“コラボ・アルバム”ブーム、“With Friends”ブームを作った方の1人であり、アメリカが敬愛する大御所であり、お利口Narasの大好物。一方でガガ様は2000年代最大のポップアイコンの1人。昨今はやや話題性に欠けておりますが、ファッション、音楽性共に方向転換を図っている真っ最中かと思われます。こちらは、そんな2人が昨年度リリースした スタンダードアルバムからの1曲でしたが(Best traditional pop vocal album受賞)、黄金時代の幸せなアメリカを彷彿とさせる、和やかで楽しいステージでした。想定の範囲内のパフォーマンスではありましたが、ガガが少女のように可愛らしく、トニーは流石に巧い。やや”イモーショナル続き”だった会場の空気を変えるのにも、最適でした。バンドはTony Bennett Quartet(ギターGreg Sargent、ピアノLee Musiker 、ベースMarshall Wood 、ドラムHarold Jones)。ガガはオスカーでのSound of musicトリビュートも披露しましたが、あちらも意外性があって面白かったです。
★★★★★ヘルシーで美しいで賞(いい加減体型ディスるのやめろ下さい)。
★★★☆☆スタンダードをスタンダードに。

トニー世代にもガガ世代にも、素敵なコラボレーションです。

⑪Usher "If It's Magic"

グラミーにおけるトリビュートには誰も何も期待していな(略)。名アルバムからの名曲を、アッシャーが披露。洗練されたお洒落なものではありましたが、本編でこそ、如何にもスティービーらしい、楽しいナンバーをやっても良かったのではないかと悶々。しかしこういう所が如何にもグラミーなので文句は言いますまい。曲も良いです、ハープも美しいです、アッシャーもしっとり歌える大人です、スティービーが聞かせた一瞬のハーモニカもいつも通りのスティービーです、でも、でも、だって。悶々とした方はこちらをどうぞ(メンバーも選曲も最高)。A tribute to Stevie Wonder by Beyoncé, Ed Sheeran and Gary Clark Jr他.

⑫Eric Church "Give Me Back My Hometown"

ピッグテイルのKeith Urbanの紹介で登場、カントリー界のアウトサイダーことEric Church。トレードマークのサングラスにジーンズという出で立ちで、バンドを引き連れての演奏でした。大画面には、世界各地の公民権運動や警察の横暴を映し出した映像が。演奏自体は グラミーの空気に飲まれてしまったのかな、という不安定なものでしたが、これは出順も悪かったと思います。CMTのパフォーマンスはロックで勢いあって、さすが主戦場という感じで格好良かったです。
★★★★★夜でもグラサンだけど、レッドカーペットでは正装できるアウトサイダーで賞。
★☆☆☆☆飲まれている所に萌えるというのは、ある。

4枚目のスタジオアルバム。

⑬Brandy Clark,Dwight Yoakam: "Hold My Hand"

蒼々たるメンツ(Sheryl Crow, Miranda Lambert, The Band Perry, Reba McEntire, LeAnn Rimes等)への楽曲提供によって、昨今のカントリー界を支えて来た若手作曲家Brandy Clarkが、スタジオアルバム「12 Stories」の発表で、ようやく表舞台に登場。サブステージでギターを爪弾きながらの演奏です。そして彼女に華を添えるのは超大御所Dwight Yoakam。こちらのデュエットは父が娘を支えるような暖かさに溢れたもので、歌の情景が会場に広がる甘く切ない素敵なステージとなりました。2人とも嬉しそうでほんわかします。
★★★★★今宵唯一のカントリーハットで賞。
★★★★☆和みのステージ。

デビュースタジオアルバム。

⑭Rihanna,Kanye West,Paul McCartney: "FourFiveSeconds"

これも今回の目玉のひとつ。これがお目当てで、見続けていた方も多いことでしょう。リアーナの新譜をカニエがプロデュースするということがレッドカーペットで明かされておりましたが、それにしてもこのメンツ、凄いですね。一見不思議なコラボに見えますが、実はさもありなんとも言えます。自己顕示欲ちゃん、目立ちたがり屋君、サー・ミーハーの三つ巴。畑も世代も異なりますが、それぞれが各界を代表する才能ですから、この時代だからこそできる異種格闘技で楽しませて頂きたいものです。ステージはと言えば、白い大画面の前で黒を基調としたシックな衣装で各々が仕事をこなすという、PVと同じシンプルなものでしたが、普段はお騒がせな2人も、大御所の前できちんと職務を遂行しておりました。しかしサー・ポールは、いつしかグラミーの常連となっておりまして、最早有難さも薄まって参りました。なにしろお元気そうで何よりです(死んでいる疑惑がまた流れていましたが、あれのソースは虚構新聞的な所です)。
★★★★★格好良さは否めないで賞。
★★★★★ミーハーは全く悪いことではない。

お祭りコラボ。

⑮Sam Smith、Mary J. Blige:"Stay with Me"

何故か2度目のテイラーによる紹介。2014年に大躍進を遂げ、主要4部門(最優秀レコード賞、最優秀アルバム賞、最優秀楽曲賞、最優秀新人賞)含む6部門にノミネートされたエンジェルボイスのサム&Queen of HipHop Soulメアリーによるデュエット(公式にリリースされています)。まずは階段状のセットに並ぶストリングス隊の合間から青白い光に照らされてサムが登場。この1年で数えきれない程歌って来たとは言え、この方は本当に綺麗に歌いますね。堂々としたものです。そしてサビの後に黒いマーメイド型のドレスをお召しのクイーンが登場、会場が沸きます。この方も舞台を我が物にする方ですが、相変わらず存在感が凄かった。情緒と情緒のぶつかり合いで、サムとも相性が良いです。あと “Why am I so emotional”の部分が正にメアリーという感じで、良い。サムは好感度抜群(=セルフプロデュース&マーケティング能力抜群)ということもあり、受賞も大方の予想通りの結果と言えるでしょう。今年を代表する曲でした。
★★★★★小さな事を大きく歌いま賞。
★★★★★耳タコ感を覆す良曲兼ナイス人選。

とんでもなく売れたデビューアルバム。

⑯Juanes:"Juntos (Together)"

Gina Rodriguezの緊張を隠しきれない紹介で登場。去年は、ワールドカップの勢いもあって、各地でヒスパニック系がごり押しされておりましたが、やはりグラミーでもひとステージ設けました。しかもスペイン語で!ラテンアメリカの勢力が、認めざるを得ない程に大きくなっている証拠ですね。筆者のようなテンションの低い引き蘢りアジアンには、胸焼けが禁じ得ない部分がありつつ、彼らのポジティブなパワーからは学ぶべき事が多々あるなあと思います。今後、例えばイグレシアス親子や、Miami Sound Machine や、アギレラのような勢力になるのでしょうか(本国で売れ、アメリカで売れ、世界市場へ…)。注目です。
★★★★★スペイン語で歌った事が意義深いで賞。
★★☆☆☆情熱の撒き散らし。

コロンビアとベネズエラでバカ売れ。

●プレゼンターPrince様●

ここでAlbum of the Yearの発表。プレゼンターで、プリンスの登場です。プレゼンターをするだけなのに会場がスタンディングでしたが、何せプリンス様ですので、当たり前です。そして口を開くなり名言が出ましたので、特に若者の皆様におけましては、しっかりメモして下さい。

"Albums, remember those? Albums still matter. Like books and Black lives, albums still matter. Tonight and always." 

……短い御言葉の中にどれだけの事を込めるのでしょうこの方は。
まずアルバムに関してですが、さすがトラック分け無しのアルバムをリリースした御方ですね(嘗て「Lovesexy」で9曲を1トラックとしてリリース)。そうです、アルバムは1つの世界ですから、売れそうな曲を単体でバンバン配信すれば良いってものではないのです。往年の音楽ファンが皆思っていることですが、プリンス様がグラミーで発言してこそ意味があります。Album of the year のプレゼンターとしては最高の人選でした。

そしてもう1つ、プリンス様の口からダイレクトに述べられました「Black lives(Matter)」。これは冒頭で述べたように、数々の黒人差別事件を受けて生まれたスローガンです。日本では昨今、“黒塗りフェイス”でTVに出ようとした某グループや、某新聞に掲載されたアパルトヘイト肯定記事が大問題となり、日本における人権意識の低さと、人種問題に関する無知さが話題となりましたが、アメリカでは社会的にも政治的にも、黒人の地位向上に向けて人々が戦って来た歴史があります。音楽界でも、数々のミュージシャン達が、各時代で、死に物狂いで戦ってきました。例えば1981年に誕生したMTVでは、黒人アーティストは殆どOAに乗らなかった(DavidBowieの有名インタビュー参照)。”キリストよりも有名”となった歴史上最大のスーパースターMichaelJacksonは、黒人というだけで凄惨なバッシングを受け、Black or whiteやThey don't really care about usを歌っています。こうした先人の努力によって、”過去と比較すれば”、ある程度は平和になっている世の中ですが、今一度考えるべき時に来たようです。

……そして発表。プリンスからベックが受け取るのもなかなかシュールなのですが、そんなことより、ここでカニエがやらかしました。嘗てMTVでテイラーの受賞スピーチに乗り込み「ビヨンセがとるべきだ!」との持論を展開して炎上しまくった彼ですが、ここでまさかの“おふざけ登壇”。受賞したベックも「Need some help」と笑っていました。ネットでは真面目な皆さんに再びフルボッコにされておりましたが、今回は完全なおふざけですから、会場は楽しげでしたね。特にJayZ。

ベックの12枚目となる復活アルバム。

⑰Sia: "Chandelier"

Elastic HeartのPVに出演して大きな議論となったShia LaBeoufがポエムを読み上げ、Siaの登場。2014年に漸く大躍進を遂げた超実力派の彼女、バセドウ病の発病以降は楽曲提供を中心に活動していましたが(Kylie Minogue、Beyoncé、Celine Dion、Rihannaなど)、遂に表舞台に上がらざるを得ない程に注目を集め、以来覆面歌手として活動しています。今回は、自由に踊り狂う少女Maddie Zieglerが出演し、バイラルセンセーションとなったChandelierのPVを、ステージ上で再現ししました。しかも共演はなんと、SNL等で有名なKristen Wiig。これには観客一同、驚きだったのではないでしょうか(各地で色々な方と共演しています。日本版は土屋太鳳ちゃん)。
各所で様々なアレンジで演奏しているこの曲ですが、今回は、なるほど、そう来たか。PVの躍動感が素晴らしすぎるのと、「え、この大人、誰…?え、クリスティン?!」という衝撃で、生放送中はわちゃわちゃしてしまいましたが、見返せば見返す程、見応えのあるパフォーマンス。じわじわ来る。……因みにこの曲のコレオグラファーはRyan Heffington。ArcadeFireやSigur rosなどのPVも手がけています。MaddieちゃんはプレゼンターShia LaBeoufと共に新曲Elastic Heartにも出演し、大きな議論を呼びました(個人的にはアートにしか見えませんし、素晴らしい完成度かと思います)。
★★★★★MaddieちゃんはPina Bausch to beで賞。
★★★★☆グラミーで、生放送で、コレ!

6枚目のスタジオアルバム。

⑱Beck,Chris Martin: "Heart Is a Drum."

Dave Grohlの紹介。6年振りのアルバムで見事Album of the year を受賞したベック。原点回帰的なアルバムで、サウンド面は、2002年「Sea Change」にも参加した父David Campbellが支えています。今回はColdplayのフロントマンChris Martinとのパフォーマンスでしたが、相性が悪いわけのない2人です。派手さはありませんが、フォーク調の美しく奥深く広がる旋律が会場を包み、厳かなステージとなりました。良き。
★★★★★Beckの復活がなによりで賞。
★★★★☆見つめるクリス、見つめないベック。

ベックの12枚目となる復活アルバム。

●プレゼンターJamie Foxx & Stevie Wonder●

「一瞬のハーモニカで熱狂させるなんてどうやったんだよ」「ウィンクしたのさ」という楽しい掛け合いの後、ここでもスティービーがBlackLivesMatterに言及。29年前に We are the worldに参加したことにふれ、“We must realize that we are the world and we must come together to fix all that's wrong”と語りました。Record of the year発表時はジェイミーがRay Charlesの真似をして会場を沸かせました。

⑲Beyoncé "Take My Hand, Precious Lord"

先程登場したChris Martinの元妻であり、ビヨンセの友人であるGwyneth Paltrowがプレゼンターで登場。“We live in the complicated time”としてBlackLivesMatterに関する呼びかけをし、「この曲はビヨンセがママに歌ってもらっていたのよ」と曲紹介。……補足しますと、この曲は数々のアーティストによって歌い継がれているゴスペルソングで、中でも公民権運動で使われたMahalia Jacksonのバージョンが有名です。先述した映画「Selma」の中ではLedisi Youngが歌っているため「何でビヨンセが歌うの…?」「何で(黒人のための)プロテストソングを、白人Gwynethが紹介してんの…?」という疑問が沸々と沸いておりましたが、ショービズだから……。勿論ビヨンセが歌う影響力は果てしなく強くはあります。

さて、肝心のパフォーマンスですが、昨年度は超エロティックなステージで賛否両論を喰らったクイーンBですが、今年は白い美しいドレス姿で登場し、荘厳に歌い上げました。黒人男性のみで構築されたクワイアーに囲まれ、中央で力強く歌うB。本当に美しく、人種差別や性差別と戦う現代の女神を体現しているかのようでした。一方のLedisi Youngは「自分がステージに立てなかったのはちょっと残念だったけど、仕方ないわ。私もいつかグラミーのステージに立てると良いのだけれど」と語りました。
★★★★★Ledisi Youngはちょっと可哀相だったで賞。
★★★★★好き嫌いを超えた女神像。

クイーン5枚目のアルバム。

⑳John Legend,Common:"Glory"

ビヨンセの紹介で登場、大トリで映画「Selma」の主題歌です。今年は式全体を通して「きっちり感」が出ていて、良くも悪くも演出が凄く頑張っているんだなあという印象が強かったのですが、式全体を通して流れる「BlackLivesMatter」に対するプロテストの空気をここで一気に回収、カタルシスへと繋げました。クワイアーとストリングス隊が並ぶ中、ジョンのピアノと歌、コモンの淡々としたシンプルなラップが響き(ファーガソンにも勿論言及)、大画面にはSelmaの映像が流れます。これは、日本の某新聞で、アパルトヘイトを肯定なさった方などは、映画と合わせてご覧頂くと宜しいのではないでしょうか。という主張がはみ出てしまう位、良くできたトリでした。オスカーと合わせてご覧下さい。
★★★★★但し会場とお茶の間の温度差はあることで賞。
★★★★★最後の握手の格好良さ…!!!!!

Selmaからの一曲。

【総括】

★★★★☆
お祭り要素は薄いものの、意識高く、意義は深く、歴史に残る年でした。
アメリカ国内における人種差別を全く気にかけてこなかった人々にとっては、知るきっかけ、考えるきっかけとなったのではないでしょうか。一方で、Black Lives Matterに関する演出があったからでしょうか、全く関連性の無いパフォーマンスも全体的にしっとり静かなものが多く(クワイアーとストリングスがやけに多かった)、お祭り感は薄かった。グラミー側の演出を超えるアーティストの主張が続いた上、オバマ大統領のスピーチもあったため、全体的に”説教”的な、”イモーショナル”な回であったと言えます。いやしかし、良かった。見応えは十分です。

余談ですが、昨年度は大トリで御大が登場する前にOAが終了して大炎上したからでしょうか、今年は、受賞スピーチ中に「早くはけろ」とでも言わんばかりにBGMを流し、残りの尺をお知らせする戦法に出ており、なんとしてでも時間通りに進行しようとする製作陣の気迫が感じられました。アーティストはやりにくそうでしたが、演奏がぶった切られることなく終了したのは良かったです。なんか不思議なBGでしたけど。

-音楽
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